近江女、一人と二匹で暮らせば…

得意先と打ち合わせをした。
毎年、秋に発行する、某研究所の「総会シンポジウム」の報告書。
ページ数は300ページになる大作だ。


「ところで、去年はいつ納品でしたっけ？」と聞かれた。


迷わずためらうことなく
「10月２日です」と速攻で答えた。

「よく覚えていますね。」と半分呆れたように驚いたように言われた。



忘れる訳がない。
その日、数日前から具合が悪かった、しーちゃんを置いて
後ろ髪を引かれる思いで納品に行ったのだから。


「しーちゃん、待っててな。すぐに帰ってくるしな。」





そう言いながら行って帰って来たら、
しーちゃんは台所で口から泡を吹いて倒れていたのだから。
私が出かける前までは、具合は悪そうだったけれど、
元気で、玄関まで見送りに来てくれていたので
その後、フードを食べに台所に行って倒れたのだろうか？
留守にしていたので、想像するしかない。



私が帰って来た時は、既に動けなくなっていて
とても悲しそうな声で、弱い声で、鳴いていた、しーちゃん。
そのしーちゃんを抱きかかえて、
診療時間が終わった病院に走ったあの日。
ええ、絶対に忘れることのない、10月２日。
（しーちゃんが実際に亡くなった３日もね。）




我が家のニャンズは、とてもいい仔達で、
私が遅くまで仕事をすると、必ず仕事部屋に来て寝て待っている。
私の仕事が２時になろうが、３時になろうが。
ひたすら仕事部屋にいる。
絶対に動かない。


その大作の仕事で連日遅くまで仕事をしていても
風子も、しーちゃんもいつも一緒にいてくれた。

そうしてやっと納品して、帰って来たら、しーちゃんが倒れていた。



元々心臓疾患だった、しーちゃんだから、
いつか、そんな日が来ると心のどこかで覚悟していたけれど
まさか、その日がそうだなんて…。



今年は少し前倒しになって、９月の下旬に納品になる（予定）。
今年も忙しくて、現在聞いているだけでも、
その時期に５件を同時進行でやらなければいけない。


また遅くまで、仕事かな。
風子と一緒に、しーちゃんも仕事部屋に来てくれるかな？


今年の納品の日にも、私はきっとこう言うだろう。




「しーちゃん、待っててな。すぐに帰ってくるしな。」






この暑い夏が終わったら、しーの一周忌がやってくる。